上顎骨の前方成長が問題となるケースは、上顎骨が成長しすぎる場合と上顎骨の成長がよくない場合、すなわち
(1)上顎骨の 過成長 による上顎前突(出っ歯)
(2)上顎骨の 劣成長 による切端咬合または下顎前突(反対咬合・受け口)
の二つがあります。(1)の上顎骨の過成長は欧米人と比較して日本人では多くありません。程度がそれほど大きくなければ、顎外固定装置を用いて上顎骨の成長抑制と同時に上顎の歯を全て後ろに移動させて下顎の歯ときちんと咬むようにしますが、程度が大きければ外科矯正の適用になります。
(2)の上顎骨の劣成長による切端咬合、反対咬合はしばしば見かける不正咬合です。顔の中央部、鼻翼の横付近に陥凹感を呈する顔貌になります。治療には上顎前方牽引装置を用いて上顎骨全体の前方成長を誘導します。このタイプの反対咬合では上顎の前歯が、下顎の前歯との接触を求めて大きく前方に傾いている場合が多いのですが、その場合は単純な前歯だけの反対咬合の治療のように上顎の前歯を前方に傾ける治療は禁忌となります。残念ながら子供の反対咬合に対して同じようなワンパターンの治療を行う矯正専門でない歯科医も存在します。子供の矯正こそ専門の矯正医の診断が必要である理由はこんな点にもあるわけです。